時計の針の音。隣に座っている人の呼吸音。飲み物をすする音。こうした周りの音が気になったり、ちょっぴりイライラした経験は誰しもあるでしょう。しかし、これらは通常一時的なもので、ほとんどの人は気になったとしてもスルーすることができます。もし、こういった特定の音が強い怒りやストレス、不安を感じさせるなら、あなたは「ミソフォニア」かもしれません。
ミソフォニアは、「音嫌悪症」とも呼ばれる障害で、特定の音に対して、激しい怒り、嫌悪感、逃避願望といった強い否定的反応が出現する障害です。ミソフォニアの人の多くは、こうした感情的な苦痛を避けるため、トリガーとなる音を遠ざけようと、外出や人間関係から距離を置いてしまうこともあります。
この記事では、ミソフォニアって何?という問いに答えるとともに、治療法や、ミソフォニアの方が生きやすくなるためのアイテムとして、ミソフォニアに役立てられる耳栓を紹介していきます。ぜひミソフォニアについて正しい知識をつけ、ご自身や大切な人の生活向上に役立てましょう。
ミソフォニアとは?
ミソフォニア(英:misophonia)は、「音嫌悪症」あるいは「音恐怖症」とも呼ばれる障害で、特定の音に対して強いネガティブな感情が現れる医学的な障害です。
聴覚過敏が、普段何気ない音が大きく聞こえる状態のことを指すのに対し、ミソフォニアは、特定の音がとても気になってしまう状態のことをいいます。
トリガーとなる音は、通常、日常的かつ反復的で、ミソフォニアを持たない人にはあまり気にならないような音です。例えば、咀嚼音、鼻すすり、咳払い、くしゃみ、タッピング音、呼吸音、いびき、あくび、ため息、口笛、鼻歌、爪を切る音、歯磨きの音、ささやき声、タイピング音、ペンをカチカチ鳴らす音、時計の秒針音などがトリガーになり得ます。一つのトリガーだけを持つ人もいれば、複数のトリガーを持つ人もいます。
ミソフォニアの当事者がこれらの音を聞くと、強烈な感情的な苦痛を引き起こす可能性があるため、多くの人はそうした特定の音に遭遇する可能性のある状況を極力避けようとします。
ミソフォニアは、アメリカの精神医学会ではまだ正式な精神疾患として認められていませんが、ミソフォニア研究の先駆者であるSchröderは、以下の診断基準を提案しています。
ミソフォニアの診断基準:
- 他の人が発する特定の音(例:食べる音、呼吸する音)が聴こえたり、聴こえそうになったりすると、即座にイライラ・むかつき・怒りなどの反応が起きる
- 自制心を失うような激しい怒りで、攻撃になることもある
- 本人は、怒りや嫌悪感が過剰で不合理だとわかっている
- 嫌悪する音が聴こえる状況を回避する。回避できないときには、激しい不快感、怒り、嫌悪感に耐える
- 怒り、嫌悪感、回避は、重大な苦痛(怒りや嫌悪感の対象となる人に迷惑をかける)または本人の日常生活に重大な支障をきたす。例えば、怒りや嫌悪感により、仕事や授業への参加や、社会交流が困難になる
- 強迫性障害(例:清潔感のない人への嫌悪感)やPTSD(例:外傷に関連する刺激の回避)などの別の障害だけでは説明がつかない
上記に当てはまる人は、ミソフォニアである可能性が高いため、一度耳鼻咽喉科を受診されると良いでしょう。
ミソフォニアの原因
ミソフォニアに関する臨床的な研究が始められたのは、実はつい最近のことです。そのため、いまだによく理解されておらず、正確な原因は不明です。しかし、遺伝的、脳構造・神経学的、環境的要因の組み合わせによって引き起こされると考えられています。
また、ミソフォニアの多くは他の発達障害や精神疾患(ADHD、自閉スペクトラム症、うつ病、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害など)、または聴覚障害を持つ人に併存する形でみられるといわれています。
ミソフォニアの治療法
正確な原因が不明なこともあり、今のところ、ミソフォニアを根本的に治す治療法はありません。しかし、ミソフォニアを持っているからといって、トリガーとなる音から逃げるような生活を送らなくても、根本治療はないものの、症状を管理するいくつかの方法はあります。以下に主な治療法を紹介します:
耳鳴り順応療法(Tinnitis Retraining Therapy = TRT)
TRT療法は「Tinnitus Retraining Therapy」(耳鳴り順応療法)の頭文字をとった治療法で、トリガーとなる音に対する心理的反応を変えて脳を再訓練させることで、トリガー音が気にならなくなるようにする方法です。TRT療法には、ミソフォニアに関する理解を深めるためのカウンセリング、ストレス管理、音響療法(サウンドジェネレーターを使ってホワイトノイズや自然の音を流すことで、トリガー音の影響を軽減する方法)などが含まれます。
認知行動療法(Cognitive Behavioural Therapy = CBT)
認知行動療法(CBT)は、トリガー音に対する個人の思考パターンと行動を変えることに焦点を当てた心理療法です。具体的には、トリガー音に対して持つ否定的な思考を、より合理的で前向きな思考に置き換えたり、トリガー音に対する回避行動を減らし耐性を築くための暴露療法などが組み込まれます。
いずれも、ミソフォニアの症状を軽減し、トリガー音に対する反応をうまくコントロールできるようになるための実用的な手法だといわれています。
他にも暴露療法やEMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)などの方法もありますが、これらはミソフォニアに対する臨床研究が少なく、効果が立証されていないようです。
なお、発達障害や精神疾患の随伴症状としてのミソフォニアは、それらの発達障害や精神疾患に対する標準治療で改善することも多いようです。
ミソフォニアと耳栓
ミソフォニアを含む、音に対する敏感さを持つ多くの人々は、耳栓(イヤープラグ)を使用することで、これらの状態とうまく付き合っていくことができます。
ミソフォニアを持つ方には、常に耳栓を着用することは推奨されていません。これは、長期的には状態を悪化させる可能性があるからです。
しかし、トリガー音に対する耐性を高める目的としては、耳栓は効果的なアイテムと言えるでしょう。
完全遮音するのではなく、ノイズをフィルターしてノイズレベルを下げる耳栓を着用することで、苛立たしい音から解放され、騒がしい環境でも冷静さとコントロールを保つことができます。普段、トリガー音を避けるために外出や混雑した場所を避ける方でも、ミソフォニアに適した耳栓を使えば、トリガー音とのコンタクトが最小限に抑えられ、外出する自信をつけてくれます。また、トリガー音に邪魔をされずに勉強や仕事に集中したい時にも、耳栓は役立ちます。
ミソフォニアに最適な耳栓
従来のフォーム耳栓は音を遮断しますが、これはかえってトリガー音への反応を悪化させてしまうリスクがあります。ミソフォニアに最適な耳栓は、完全に音を遮断するのではなく、ノイズをフィルタリングし音量を下げるものです。音の大きさを減らすことで、症状の悪化を避け、音を感じることができるからです。
Loop Engage(ループ・エンゲージ)は、まさにこれを実現します。音波をブロックするのではなく、フィルタリングし、最大16デシベルおよび10デシベルのノイズリダクションを提供します。
4種類のサイズのイヤーピースが付属しているため、どんな耳の大きさでもフィットに困ることもなく、素材は柔らかいシリコンを使っているため、快適に着用できます。簡単なお手入れで清潔に保つことができ、衛生面でも従来の耳栓と比べて安心です。
Loop Engageは、耳栓特有の「閉塞感」を抑えるように設計されており、不要なノイズを低減する遮音性を持ちつつも、会話には支障のない設計となっています。目立たないデザインと快適な装着感を持つLoopの耳栓は、日常での使用に向いています。
ミソフォニアに悩みを抱える方は、ぜひ一度Loopのミソフォニアに適した耳栓、Engageを試してみてください。日常の症状を軽減し、安心して日々を過ごすための一助となることでしょう。